冬の北海道でダイビング!vol. 5ギンポとカジカは地味な魚じゃない!

冬の北海道でダイビング!vol. 5ギンポとカジカは地味な魚じゃない!

2022-04-28 0 投稿者: Sayaka

こんにちは、冷たい海を愛してやまない、さやかです。
北海道シリーズはついに今回で5回目となり、当初予告していた最終回となります。

 

しかしですね、北海道の海の魅力をわずか5回で語り尽くせるわけない、ということに気がつきまして、今後もちょくちょく北海道ネタは挟んでいきたいと思います。

 

さて、今日の主役はギンポとカジカです。地味と思われがちなカジカや北海道でしか見られないギンポが実はめちゃくちゃ美しい生物だということをネチネチ見ていきましょう!

ギンポじゃないギンポ!?(ゲンゲ亜目)

普通のコケギンポ

ギンポ、と聞いて、知ってる方はこちらの頭がふさふさした小さな生物を思い出すかと思います。本州で特によく見かけるコケギンポやイソギンポなどは「ギンポ亜目」に属していますが、北海道にいるギンポと名のつく魚の中にはギンポではなく、ゲンゲ亜目に属する種類も多くいます。

 

その中でも北海道のダイビングでよく見られるゲンゲ亜目として、「フサギンポ」「オオカミウオ(道東のみ)」「アキギンポ」をご紹介します。

ゲンゲ亜目とは
ゲンゲ亜目の多くの種類は比較的 寒冷な海 に生息していることが共通している。

ということくらいで、ギンポ亜目の形態と明確に違う点は見つかっていないようです。

冷たい海の調査と暖かい海の調査をオーバーラップして研究されることが少ないからなのか、冷たい海の調査があまり進んでいないからなのか、謎の部分が多いようです。

フサギンポ

こちらはアイキャッチにも設定している卵を守る母フサギンポ。フサコさんです。

頭の大きさは私の握り拳くらいはあって、「ギンポ」という名前からは想像できないくらい大きいのです。少し強面ですが、コケギンポのコケ部分を巨大化させたようなフサフサは見事としかいいようがありません。

 

個体のサイズが大きくなるほど顔のフサフサが立派になり、貫禄が出てくるので大きな個体の方が威厳があって個人的には好きです。

 

フサギンポは繁殖期になると浅い場所に上がってくる個体もいるため、冬の北海道でこのように放卵している個体を見ることもできます。こちらの個体は水深8〜10メートルくらいにいました。

 

卵を守るのはお母さんの役目だそうで、半透明の糸のようなものはヒトデの管足だと思われます。卵が今まさにヒトデに狙われているようで心なしか厳しい表情の母です。

オオカミウオ

私が憧れつづけたオオカミウオ!ずっと会いたかった生物でして、昨年末ついにその夢が叶いました!

ウツボみたいに顔だけ出している印象の強い生物だったので、全身が出ている状態だったことにはとても驚きました。70センチほどのやや小さめの子オオカミウオなのでとっても綺麗なお顔立ちです。

 

北海道出身の私は子どもの頃からあの印象的な顔を水族館で見ており、「おじいちゃんに似てるね〜」なんて言っていたこともよく覚えています。子どもの頃から記憶にある生物が知床で見られると知った時、いつか必ず見てみたいと思っていましたので、感無量でした。

ちなみに知らない方が多いと思うのですが、オオカミウオの泳ぎ方ってすごくクセが強いんですよ。イメージはやっぱりウツボみたいににょろにょろ〜っと泳ぐのを想像すると思いますが、ぜんっぜん違うのです。

 

一言で言うと「大砲の弾が吹っ飛んでいく感じ」です。ものすごい砂煙をあげて、途中いろんな場所にぶつかりながら騒々しい勢いで泳ぐんです。

 

意外でしょう?

 

私もこの個体を撮影していて、突然の衝撃と煙幕に包まれたと思ったら、忽然と姿が消えていて砂煙だけがところどころに残っているような状態でした。

 

呆気にとられている私の様子を見てガイドさんめちゃくちゃ笑ってました。

 

ところで、オオカミウオは道東でしか見られない、と書きましたが、生息域自体は東北まで分布しているようです。おそらく、レジャーダイビングで見られる水深に生息している、という意味では知床だけなのかもしれません。

英名でもWolfeelとかBering wolffishというらしいので主にはベーリング海に多い生物なのでしょう。

アキギンポ

ご紹介したゲンゲ亜目の中で一番ギンポらしいサイズ感なのがアキギンポです。

全身でている秋のアキギンポ
オレンジのアキギンポ

岩壁の穴から顔を出している様子は知らなければコケギンポと間違えてもおかしくないくらいではありますが、特徴的なのは下顎の皮弁です。ここが一番わかりやすい違いかなと思います。コケギンポの下顎はツルッとしていますね。

 

頭部のふさふさはアキギンポの方が広範囲から生えていて、個体によってはタテガミっぽい感じもあります。体色は赤、オレンジ、白、茶色です。紅白の個体も多く縁起のいいカラーリングです。

 

秋頃は求愛シーズンとなり、高確率で岩穴から出たアキギンポをそこかしこで観察することができます。

カジカは地味じゃない!見れば見るほどハマる、その魅力はヒレ!?

日本のダイビングでカジカってあんまり注目されないですよね。海底にいて、岩と似たような色と柄で正直パッとしない印象の方も多いはずです。

でも、北海道の海では高頻度で紹介されますし、実はとっても美しいんです!

オニカジカ

カジカ好きには堪らない被写体、オニカジカ。繁殖行動から産卵、抱卵、幼魚など様々なステージをレジャーダイビングで観察できる上に個体数も多いため、オールシーズン楽しめる生物です。

エッグスポット;

特に求愛中の雄のエッグスポットと呼ばれる臀鰭は芸術的としかいいようがありません。おしゃれすぎます。オニカジカは雄が卵を守る魚で、この卵のような模様ですでにたくさんの卵を守っているかのように見せかけて、モテるイイ雄アピールをするそうです。

(でも実際、メスにも似たような柄の臀鰭あるんですよね…たしかに雄の方が華やかではあるけど…)

これをパターンフォトのように平面的に撮影すると…もう魚の要素はどこへやら

卵;

赤系の卵を岩に産みつけます。雌の個体によって色が若干違って、オレンジの卵もあり、これまたなかなか綺麗なのです。

稚魚・幼魚;

稚魚はもう可愛いのなんのですよ。体長1センチほどなので体のほとんどが顔です。大きなお目目、スケスケ透明感の胸鰭も美しく、体表のゴツゴツ感も少ないので頭のツノが強調されますね。

 

お気づきでしょうか?4本のツノのような突起があります。大人になるとこの後ろの1対が長くなってきます。これが「オニ」の由来らしいです。今はまだ小鬼ちゃん。可愛すぎます!

オニカジカの稚魚
オレンジホッペのオニカジカ幼魚

少し大きくなった幼魚でも5-6センチと、まだまだ可愛らしい大きさです。オレンジのホッペが子どもらしい雰囲気にぴったりでとっても可愛いかったです。(大人でもオレンジのほっぺはいますが)

体色は個体差があるものの、やはり若いうちは明るい紫ピンクの個体が多くて色鮮やかなのが魅力ですね。

道東と道南;

さて、これまでお見せしたオニカジカの写真は積丹、函館で撮影したものですが、知床(道東)のオニカサゴは、地域差なのか、見た目が少し違います。

盛り盛りの卵を守るオニカジカ(エッグスポットも見えてます!)@知床
大人のオニカジカ@積丹

婚姻色バチバチで白黒の体色が印象的です。第一背鰭も伸びているような。サイズもかなり大きめの個体が多く、積丹のオニカジカと別物かと思うほどです。種類としては同じオニカジカといわれているようです。この大きな黒いオニカジカを知床では「クロオニ」と呼んでおられました。

 

個人的には成熟が進み大きく成長することで最終的にこのような形態になり、知床に大きなオニカジカが集まりやすい。のではないかと推測しています。

 

写真の真ん中にあるオニカジカ自身よりも大きな範囲にある卵塊…相当な数の卵を守っていますね。

キヌカジカ

どこにでもいるカジカではありますが、個人的に大好きなのがキヌカジカです。目の赤色や金粉をまぶしたような透明な胸鰭にはタメ息が出てしまいます。2021年に撮影したこの個体はどうやら特別綺麗な個体だったようで、もっとしっかり撮影したかったです。

 

じっとしていることの多いカジカは背鰭全開になる瞬間も少なく、意外にも納得のいく作品に仕上げるのが難しいのです。

 

このカジカのおかげでやってみたい撮影方法を思いついたので、完成するのはいつになるかわかりませんが、今後も何かと探しては撮り続けていきたいですね。

その他

平面状に卵を産む丸っこくて間の抜けたような愛嬌のある顔のヤギシリカジカ
緑の卵を産むシモフリカジカ

サラサカジカ

ヒメフタスジカジカ

ベロ(←青い卵を産むらしい!)

ウスジリカジカ
など

カジカの魅力を最近わかってきたところで、まだまだ知らないことがたくさんあります、今後もカジカには注目していきたいですね!

ヤギシリカジカ
愛嬌のある顔のヤギシリカジカ
オニカジカとシモフリカジカの抱卵場所争奪戦!
ヒメフタスジカジカ
ウスジリカジカ

まとめ

一見地味な色合いの生物が多い北の海ではありますが、個性的なフォルム独特の泳ぎ方色鮮やかな美しいヒレを持っていたり、クセ強な生き物が多い印象です。

 

南国のように回遊魚を追ったり、魚群を見るようなダイビングではありませんが、1匹1匹の生き物とゆっくり向き合って撮影できるのが北海道の海の面白いところだな〜としみじみ思います。こういうダイビングをするようになって、私の撮影の仕方や自然との向き合い方がイイ方向に大きく変わっていっています。

 

北海道でもダイビングをするようになって2年以上経ちますが、まだまだ知らない不思議な世界がたくさんあるので、目が離せません!

それではまた。

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