美しい黒抜き水中撮影術とは ~水中写真上達への道のりvol. 5

美しい黒抜き水中撮影術とは ~水中写真上達への道のりvol. 5

2021-01-01 0 投稿者: Sayaka

ついに2021年ですね。ことよろ!さやかです。


2020年後半は生活環境の変化によりあまりプライベートに時間を割けなかったのですが、今年はもう少しブログも水中撮影も集中したいと思っています。

皆様、本年もよろしくお願いいたします。

 

さて、「黒抜き」について簡単なテクニックだけでなく、「美しい黒抜き」のためにちょびっと厚く(熱く?)解説したいと思います。

黒抜き水中撮影 簡単 5 step

 

    1. ストロボ(必須)を焚く
    2. F値を上げる(絞る) 目安【f/14以上】
    3. シャッタースピード(ss)を速くする 目安【1/125~1/250】
    4. ISOを下げる 目安【100~400】
    5. 背景や前景に何も映らないような撮影角度を探す

 


目安の数字はフルサイズ一眼レフを基準にしているので、コンデジやマイクロフォーサーズのセンサーサイズをお使いの方は、f値をもっと小さくしていいと思います。


また、水深や透明度、その日の天気などでも加減が変わりますし、スヌート撮影する場合はこの限りではありません。

美しい黒抜き水中撮影 今すぐできる 2 point

Point1 ストロボの照射角を調整する

被写体のエッジや透明感を引き出すことができるばかりか、浮遊物の映り込みや余計な背景の映り込みを抑制できる

 

Point2 暗い環境(曇りの日や夕暮れなど)で黒抜き撮影する

明るくて透明度のいい海で無理に黒抜きするよりも美しい仕上がりになりやすい

⬇️それでは、もう少し詳しく解説しましょう⬇️

黒抜き写真とは

まず、「黒抜き」というのは本記事のアイキャッチにもなっているように背景を真っ黒にして被写体にだけ光を当てて撮影する手法のことです。逆にいうと被写体以外の情報を極限まで削った写真ともいえます。


他にも「青抜き」と言うと背景を海の青だけにするとか、そんな使い方をする言葉です。
また、背景にした生物の名前を使って「○○抜き」とかアレンジして言う方も時々いらっしゃいますね。

なぜ黒抜き写真にするのか

テクニックとして黒抜きをできるというのは大切なことですが、「黒抜き」という写真の表現技法を選ぶ理由がもっと重要なことだと思っています。

 

写真表現では「何を見せて何を見せないか」これがとても重要です。

 

特に水中は岩などのモザイク調の柄も多く、ごちゃごちゃした印象になります。

まとまりが悪く何を表現しているのかわかりにくくなりがちです。まして半透明の生物だったら尚更です。

 

「被写体の美しい造形だけを表現したい!標本のように!」

 

ということであれば黒抜きや青抜き撮影はとても良い表現のツールになるはずです。

また、ストロボ照射角を被写体に応じて使い分ければ、繊細な輪郭や内側から発光する様な透明感を引き出すこともできます。

黒抜きのストロボ光の当て方

ここでは基本的にマクロ撮影(小さい生物の撮影)することを前提として話を進めます。
水中撮影の際、ストロボはどんな風に配置していますか?
多くの方は下の写真のようにカメラの真横あたりでしょうか。もう少し前方?

フルサイズ+60ミリレンズの仕様

単三電池は被写体の代わりです(笑)

もちろん、この照射角度でも黒抜き撮影することが十分に可能です。


ただし、被写体を撮影する角度やロケーションを考えないと、背景にある余計なものにまで光が当たってしまい、黒く抜けない可能性があるので注意が必要ですね。

 

私は半透明の生物を撮影する際には、下の写真のように、被写体の真横に来るようにストロボを配置します。(真上や真下からでもokです)

60mmレンズでこの距離感だと単三電池はこれくらいの大きさ

浮遊系生物と呼ばれる幼魚や幼体、クラゲ類などのプランクトンを撮影する時はほぼこれで撮影します。

 

この配置だと被写体の透明感と輪郭をとても綺麗に描写できるのです。正面からの光が足りなく被写体の真ん中あたりが暗くなることもあるので、正面からライトで弱くスポット光を当てたら完璧ではないでしょうか。

 

もしくは、片方のストロボをもう少し前方に出して被写体のごくわずかに後ろから当てバックライト気味にし、もう片方はわずかに後方に寄せて被写体の前面に光が回るように当ててもいいですね。

 

光が透過しないような生物ではこの方法を使うか、両ストロボとも被写体の前面に光が回るように配置してもいいかもしれません。

バックライトとは

先ほど、バックライトと言う言葉がでてきたので軽く解説します。

バックライトはライティング方法の一つで、被写体の後ろから光を当てることでエッジをくっきり描写することができます。

 

下の写真1枚目はストロボを前方から当てた写真です。エッジのキレも今一つですし、懸念していた後方の岩に光が当たってしまっています。

足を拡大。うーん地味。。。

次の写真はややバックライト気味に横からストロボ光を当てています。

キラキラ

横からストロボ光を当てることのもう1つのメリット

ストロボ光を横から当てることで、実はもう1ついいことがあるんです。

浮遊物やハレーションの映り込みを抑えてくれることです。

 

黒抜き撮影をするとき、f値を大きくすることで被写界深度が深くなると、浮遊物(ゴミ)も映り込みやすい条件になるのです。
被写界深度と浮遊物の映り込みがピンとこない方は下記記事を参考にどうぞ。

浮遊物が多い状態で真正面からストロボを当てるとどうでしょう。浮遊物に当たってカメラ側に返ってくるのです。

今回も下手くそなイラストが登場します。ご了承ください。

真横から当てるとどうでしょう。

まぁ、これはかなり誇張したイラストなのでイメージとして理解していただければと思います。

浮遊物の映る面積が減るというのが、より正確な表現でしょうか。

 

(月の満ち欠けもこんな原理でしたね)

ワイド撮影で黒抜きにするには

ワイドレンズで大きな被写体(ギンガメアジやサメなど)を黒抜きにしたいと思っているなら、

 夜の海または太陽光が届きにくいくらいの水深

 洞窟の中

 とてつもなく曇って暗い時

 非常に特殊なカメラレンズを使用する

などの何かしらの条件が揃わないと難しいです。

 

行動範囲の広い大型生物全体に光を回しつつ、それ以外には光が当たらない。と言うのは非常に限られた条件下だけでできることです。

 

もし、そんな場面に出会うことができたら、ぜひチャレンジしましょう!

International Photography Awards 2019 ~Honorable mention~ Shark in The Caribbean

これはナイトダイビングで出会ったサメです。水深10メートルほどの中層で自分自身を囮にしてサメを限界まで引きつけて撮影しました。もちろん滅多なことでは襲ってくるような種類ではないので、彼も興味津々に様子を見にきたところだったのだろうと思います。

青抜き撮影するなら

青抜きの「青」は海の色を写しているのです。

黒抜きよりもF値を下げるかシャッタスピードを遅くすることで表現できます。また、天気のいい日や透明度のいい時(透視度10m以上は欲しい)光の届きやすい浅い水深だとやりやすい表現方法ですね。

撮影時の設定は臨機応変に

冒頭で黒抜き撮影のためにはF値は大きく、ssは速く、と言いましたが、それはあくまで目安です。暗い環境での撮影であれば、f10くらいまで開けてみてもいいかもしれません。

被写界深度が浅くなれば、ゴミも映り込みにくくなるので背景を美しく仕上げることができますが、被写体を細部まではっきりと表現するのが難しくなるので、絵作りのバランスは考えどころですね。

さて、いかがでしたでしょうか。

今回UPしている写真は中層の生物ばかりになってしまいましたが、最初はあまり動かない生物で練習することをお勧めします。

中層での撮影は被写体を一定の距離を保ちながら留まる中性浮力のスキルが必須なので、初めての黒抜き向けではありません。

 

透明感のある生物で練習するならならガラスハゼが探しやすいし大きさもマクロ撮影にちょうど良いと思います。透明なエビは…ピントを合わせるのに苦労するので、少し難易度があがります。

イボイソバナガニ、ムチカラマツエビなども良いシチュエーションに生息しています。

 

私もまだまだ試行錯誤しながら撮影しているので、一緒に頑張りましょう〜!

それではまた!

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