水中写真上達への道のりvol. 4 ~絞り、シャッタースピード、露出って何だ!?

水中写真上達への道のりvol. 4 ~絞り、シャッタースピード、露出って何だ!?

2020-08-02 2 投稿者: Sayaka

こんにちは。さやかです。

水中写真を始める方の9割以上の方は「ダイビングが好き」「ダイビングを楽しみたい」「ダイビングの思い出を残したい」だからカメラを買った。という方が多いのではないでしょうか。

 

「もともと写真撮影が好きで陸上で一眼レフを使っていて、ダイビングも趣味です」という方は比較的少数派ではないでしょうか。

とは言え、前者の方々も水中写真を撮り始めると、「もっと綺麗な写真を撮るにはどうしたらいいのか」とか思いますよね。

 

ストロボがあるといいらしい、ライトがあるといいらしい、周りから色々な情報が入ってきて訳もわからず1灯6万円のストロボを勧められたりして…

 

でも、どうしてストロボがあると綺麗な写真が撮れるかとかちゃんと解説してくれない、というか一言で簡単にわかるものでもないので、当ブログではそんな迷子のような方に水中撮影に生かせる知識をじっくりゆっくり解説したいと思います。

 

ストロボについては過去の記事を参考にしていただくとして、今回は一番最初にぶつかる謎の言語、絞りを水中撮影で使いこなせるように解説します。

まとめ

先に要点だけまとめてしまいます。

難しい話は面倒だという方はこれだけでもokです。

  • 絞りはカメラに光を取り込む穴の大きさを調整するもの
  • 絞りを変えると被写界深度と明るさが変わる
  • 絞りを開放(F値を小さく)すると
    • 明るく
    • 被写界深度が浅く
    • 浮遊物の映り込みも少なくなる
    • ピントの合っている範囲が狭くボケ味が強くなる
    • パステルカラー(霞がかった)の可愛らしい印象になる
  • 絞りを絞る(F値を大きくする)と
    • 暗くなり
    • 被写界深度が深く
    • 浮遊物の映り込みも多くなりやすいが、
    • 周囲の景色を描写しやすくなる
    • 色味が鮮明になり、立体感が出る

もっと詳しく知りたい方は以下も読んでみてください。実例やイラストを交えて解説しています。

「絞り」は明暗を決めるだけじゃない

絞りはカメラに光を取り込む穴の大きさを調整するパラメーターで「F値」「f値」「f/(数字)」で表されます。

F値が小さいと穴が大きくなり、たくさんの光を取り込みます。逆にF値が大きいと穴は小さくなり、取り込む光を制限できます。

 

だから、F値って明るさを調整する機能なのね!と理解されている方は多いかもしれません。

もちろん間違ってはいませんが、実はF値は明るさ以外にも被写界深度をコントロールすることができるのです。

 

被写界深度って何、ということを手っ取り早く理解するために、実際に絞りだけを変えた2枚の写真を比べてみましょう。

f/6.3で撮影した写真です。
f/20で撮影した写真です。

もちろんご存知のように絞りを大きくすると暗くなりましたが、違いはそれだけではありませんね。ちょっとわかりやすいように、f/20の写真の明るさをデジタル補正してみましょう。

f/6.3で撮影した写真です。(同上)
f/20で撮影した写真を明るくしました。

f/20の方はピントの合っている部分以外の輪郭がf/6.3よりもシャープなのがわかるでしょうか。

 

ピントの合っている部分の前後方向の像がシャープになることを「被写界深度が深くなる」と言います。ズバリ、この被写界深度をコントロールするのが「絞り」と思っていただければ、色々な話がスムーズに理解できるようになります。

被写界深度

絞りと被写界深度について分かったような気がしてきたかと思いますが、イラストを交えてもう少し解説します。

 

下手な絵で申し訳ないのですが、こういうことです。

ポリプの真ん中(大きい黒丸●)にピントを合わせた場合について考えてみましょう。点線と点線の間は比較的くっきりして見える範囲を表しています。

小さい黒丸(・)は水中にある浮遊物です。

イラスト上側(f値 小)はピントが合ってるように見える前後方向の深さが浅い(短い)です。

だから後方が(前方も)ボケます。

被写界深度が浅いのではっきりと視認できる浮遊物の数が減りますね。ここでは浮遊物(・)が3つ。

 

イラスト下側はF値が大きく、ピントが合って見える深さが深い(長い)です。

なので、ボケが少なくなります。ちなみに浮遊物(・)は8個写り込んでしまいました。

 

F値を小さくすることで、被写体以外の余計な物を目立たなくして被写体を浮き上がらせるような表現ができます。

F値を大きくすることで、浮遊物が映り込み易くなりますが、被写体周囲の環境を表現できる写真になります。

被写体との距離と被写界深度

絞りを調節して被写界深度をコントロールできることがわかりましたね。

実はこの被写界深度、被写体との距離やレンズの種類によって変わってしまうものなのです。ここまでくると心が折れそうになりますが、少しだけ頑張ってください。

 

私の下手っぴぃなイラストで解説します。

できるだけわかりやすいように、数値は適当に当てはめているだけです、ご了承ください。

上のイラストは先ほどと同じf/6.0で撮影した場合のイメージです。

下の図は同じf/6.0を想定していますが、被写体から少し離れて撮影した場合です。

 

被写体から少し離れると被写界深度が深くなり、先ほどのf/20のようになりました。

このように同じ絞り(f値)で撮影したとしても、被写体との距離が変わると被写界深度が変わってしまいます。

 

このあたりは水中でどこまで被写体に近づけるか、とか透明度や浮遊物の量、周囲の環境などでも変わってきますので、カメラの設定だけを真似しても同じ写真を撮れるとは限らないんですよね。

まぁ、そこが腕の見せ所ってやつなんだと思います。

カメラの種類によって絞りと被写界深度は変わる

先ほどの写真ではf/6.0で撮影したと書きましたが、そのまま真似てコンパクトデジタルカメラ(以下、コンデジ)でf/6.0に設定しても上のような被写界深度の浅い(ボケの大きい)写真にはなりません。

CANON 7DMarkⅡに100 mmレンズを装着して撮影した場合の設定を想定して書いています。(SMC-1というクローズアップレンズもつけてたかも…?)

 

コンパクトデジタルカメラのレンズは被写界深度が深いのでF値をもっともっと小さくして、ぐっと被写体に近づくことで被写界深度の浅いフワッとボケ写真を撮ることが出来るかと思います。

 

ちなみにオリンパスのTGシリーズの顕微鏡モードはかなりF値が小さくなるので、ボケ味のある写真を撮るときにも使えそうですよね。(試したことないので実際どうなるかわからないのですが…)

 

絞りと霞み

絞りと被写界深度について重点的に解説してきましが、明るさと霞みについても解説しますね。

 

絞りを開放する(F値を小さくする)と、カメラ内に光を取り込む穴を大きくすることになり、写真が明るく被写界深度は浅くなりますが、霞も増えます

全体に白っぽい感じです。よく言えばパステルカラー。

 

それはそれで可愛らしい印象にはなりますが、透明度の良くない海だと本当に霞んでる感じになります。

またまたへたっぴぃなイラストで解説します。

絞りを開放(F値を小さく)すると色んな角度から光を取り込んでしまっています。水中では陸よりも遥かに浮遊物が多く、ストロボも使うことが多いですね。浮遊物に当たって乱反射した光を取り込むと白っぽくなりやすいのです。

 

陸上でわかりやすい現象だと、霧、でしょうか。霧がかっている風景に光を当てると真っ白になるのと似ている、かも?(厳密には違うかもですが)

 

そんなわけで、鮮明な色を出したい時や霞を防ぐためにはしっかり絞って(F値を大きくして)カメラに取り込む光を制限すると良いですね。

また、色味が鮮明になることで被写体に艶感というか立体感も出ます

絞ると暗くなるけどどうやって適正露出にするの?

絞ると立体感が出るのはわかったけど、暗くなってしまいますよね。

シャッタースピードを遅する以外にもISO感度を上げたり、ストロボ光を強くすることで調整します。

これをぜーんぶひっくるめて写真の明るさが「露出」と思っていただいて良いと思います。

シャッタースピード(光の情報をカメラに取り込む時間)を遅くすると手振れが出やすくなりますが、そこは以前解説したようにストロボを使うことである程度改善することもできます。

水中写真上達への道のりvol. 2 ~ピントとライトとストロボ~

 

ちなみにISO感度は上げすぎるとガサついた感じの仕上がりになったり、浮遊物が目立つ印象になったりしますが、どこまでISO感度を上げても気にならないかというのはカメラの性能次第ですね。

さて、いかがでしたでしょうか。

「絞り」を使いこなして、思い通りの写真を撮れるようになりますように!それではまた。

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