冬の北海道でダイビング!vol. 1 産卵期に見るアイナメとホッケ 主に積丹

冬の北海道でダイビング!vol. 1 産卵期に見るアイナメとホッケ 主に積丹

2021-03-28 3 投稿者: Sayaka

こんにちは!水中世界をこよなく愛する、さやかです。

 

最近すっかりご無沙汰したダイブサイトの紹介シリーズを久しぶりにお届けしたいと思います。
これから5回(予定)に渡って冬の北海道の海と生物達についてご紹介しますので、是非是非お付き合いください。最終回を読む頃には北海道に行きたくて仕方ない…はずです!

 

今回はアイナメ科のお魚がメインですが、まずは冒頭でさっくりと北海道ダイビングについて紹介します。

冬の北海道、積丹でダイビング

真冬の北海道でダイビングなんてどこかネジが飛んでいるんじゃないの?と思われる方もいるかもしれませんが、一度行ってしまうと中毒性が高く、もっと欲しくて堪らなくなるのが北海道の海です。

 

たしかにバラクーダとかギンガメアジの群れとかはいませんし、魚影も濃い方ではないかもしれません。
ですが、関東以南の太平洋側でしか潜ったことのない人にとって、北海道のダイビングで見られる生物の90%以上が初めて見る生物なのではないかと思います。(私調べ)

 

じっくり生物を狙える(ショップさんもある)ので、心ゆくまで撮ることもできます。まさしく大人の嗜みのような、噛めば噛むほど味のでるダイビングを堪能できます。フォト派にも超オススメです。

 

また、本州の方の気温感覚ですと、北海道は1年の半分は冬みたいなものかと思います。
(桜が咲くのが5月上旬GW頃で、紅葉は9月です)
その特徴がより一層深まる秋から冬にかけてが北海道の海のベストシーズンです。ドライスーツを着れるなら是非とも行ってみて欲しいダイブサイトです。

 

10年ぶりに北海道でダイビングした2019年の北海道記事は

⬇️こちらからどうぞ⬇️

北海道(主に積丹)ダイビングのシーズナリティ

シーズナリティについては過去記事でも触れておりますが、もう何度となく潜っている北海道ですので、もうちょっと詳しくご紹介します。

シーズン4〜6月(春)7〜9月(夏)10〜12月(秋)1〜3月(冬)
水温5〜15℃15〜24℃8〜20℃4〜8℃
生物サクラダンゴウオ
ナメダンゴ
ナメダンゴの幼魚
ゴッコの幼魚
ヤリガジの卵
シワイカナゴの卵
アツモリウオ
など
キアンコウの卵
エゾクサウオ
サクラダンゴウオの幼魚
ウミウシ類が増える
ヒメイカ
カレイの稚魚
ウミクワガタ
ホタテの稚貝
など
*積丹では柱状節理を見に行けるチャンスも多い
アイナメと卵
ホッケと卵
クジメと卵
ケムシカジカと卵
アキギンポの求愛
など
トド(積丹と知床)
ホッケと卵
ゴッコと卵
ミズダコ(成体、幼体)
ナメダンゴ
アキギンポ
フサギンポ
オニカジカの求愛と卵
コクチクサウオ
など
通年見られる生物スナエビ、リュウグウハゼ、ウミウシ、カジカ類、

書いてみると思いの外いろいろありますね。まだ見れてないけど、見たい生物も入ってます。
春と秋の生物が少ないのは、この時期に私があまり行けていないからです😅コロナとかコロナとかコロナのせいで!

 

ちなみに柱状節理という海底遺跡は夏が断然行きやすいです。少し沖に面しており潮が流れていることが多いです。道民ダイバーは通年ドライスーツのため、流れのあるところに行く習慣が少ない特徴があります。

北海道ダイビングの装備

水温15℃くらいまでは関東で潜るような普通のドライスーツ仕様です。北海道でダイビングするなら最低限ドライスーツには慣れておきたいところですね。

 

水温14℃くらいからは装備が少しずつ増えます。

  • ドライスーツのインナーとして
      ウィーズルという綿のツナギ
      ヒートベスト
  • ギア類は
      寒冷地仕様のレギュレータまたはチタン製のレギュレータ
      5ミリ厚のミトングローブ(3本指)
      5ミリフード(多くの方が持っているのは2〜3ミリのフードのはずです)

 

水温一桁だと、上記全部使います。ヒートベストはなくても大丈夫って方もいるかもです。

アイナメ科

さて、長い前置きでしたが、今日はアイナメ科の魚であるアイナメとホッケについてご紹介します!
どちらも愛嬌たっぷりで私の大好きなお魚です。見ても可愛い、食べても美味。

 

アイナメは北海道以外にも日本海側や瀬戸内海などでも観察できるそうで、北海道要素は少し薄いかもしれませんが、ホッケの主な生息域は東北以北なので北海道でダイビングしたい方には是非とも見てほしい生物です。

 

アイナメもホッケもオスがメスの卵を保護し孵化するまで世話をするという共通の生態があります。また、モテるオスは複数のメスの卵を守ることもしばしば。

 

アイナメ科の世界では、「モテメンこそイクメン」なのですね。

両者は同じアイナメ科で姿や生態も似ていますが、よくよく観察すると違うところもたくさんあります。私のホッケ愛アイナメ愛全開でお届けしますので、ホッケの開きしか見たことないというアナタも、読み終わる頃にはきっと会いに行ってみたくなるはずです。

アイナメ

アイナメは比較的浅場に生息しているお魚で、北海道(少なくとも積丹)では年中ダイビングで見ることができます。

 

アイナメは食べても美味しい魚ではありますが、大きくなりすぎたり、サイズがバラバラで、群れないため市場に出回りにくい魚種です。これが食卓で見かけることが少ない理由です(一定数を漁獲するのが難しい上に、サイズが違うと加工の手間がかかる)。そのためアイナメ自体を知らないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

ホッケと比べると額が広く間抜けな顔にも見えますが、獰猛な肉食魚です。あまりダイバーを怖がらない性格で、むしろダイバーの舞い上げた砂を見て、餌があると勘違いし突っ込んでくる上に仲間同士で喧嘩することも多く、なんだか騒がしい生き物です。

 

体長は50cm以上にまで成長する個体もいて、その巨体が全力で突っ込んでくる様はなかなかに怖いです(笑)ぶつかられたら結構な衝撃を感じます。

 

体色は茶色?で地味なアイナメですが、産卵時期になるとオスの全身は鮮やかな黄色の婚姻色を纏い、なんとも美しい姿になります。

しかもメスの産みたての卵はとてもカラフルで、ピンクなど。メスの個体によって色が違うようです。魚卵好きには堪らんですね。4色の卵を守っていれば、少なくともメス4匹分の卵を守っているということなんです。面白いですよね〜。

 

もちろんカラフルで艶々の卵もいいですが、ハッチアウト直前のアイナメの卵も最高です。

アイナメの卵、孵化まであともう少し!


下の写真のアイナメは2色の卵を守っています。手前の卵は産卵後時間が経ち色がくすんでいますが、奥の淡いブルーの卵は産みたてほやほやです。ほどほどにおモテのようですね!

もちろん卵も綺麗なのですが、この時期のアイナメはとても表情が豊か(に見えるの)で、私はその彼らの仕草が大好きです。

 

オスは卵が無事に孵るまで付きっきりで守ります(メスは産んだらすぐさまどこかへ行ってしまいます)。

 

卵は雑食や肉食の生物であるウニやヒトデに狙われる意外に、別のアイナメのメスにも狙われることがあります。他の女の子供を亡き者に…なんて…怖いですね〜女の世界は!産みっぱなしだし他所様の卵まで食い散らかすなんて。

 

健気なオスに話を戻すとして、私はできるだけアイナメ本来の自然な行動を迫力のある写真で表現したかったので、彼らがどんな行動を見せてくれるのか観察するためにじーっと見つめていました。なるべく私のことは忘れてもらえるように、じーーーっとしていました。

 

彼らが私の存在に少し慣れてきたらシャッターを切り、また様子を見ながら20cmにじり寄る。これを繰り返しましたが、どうしてもあともう少しという所を近寄らせてくれないのが焦ったい。
でも、考えてみればそうですよね、アイナメ自身よりはるかに大きなダイバーに警戒心を解いてくれ、なんてなかなか難しい話だと思います。

 

そうこうして30分ほど待っていると、手に何かが刺さりました…ウニです。30分前までは遠くにいたウニが目の前にいたのです。アイナメのお父ちゃんもそのウニをじっと見つめています。

 

ウニが手に刺さって痛いので何気なく退けました。
すると突然アイナメの行動が変わったのです。機敏に泳ぎ出し、いなくなったと思ったらアイナメの方が一気に距離を詰めてカメラのレンズを覗き込んできたのです!

ウニを睨むアイナメのお父ちゃん
距離を詰めてきたアイナメ

アイキャッチにもなっている距離を詰めてきたアイナメはインパクト大ですね!

 

目玉をギョロギョロさせてものすごくこちらを観察してきました。(ちょっと怖かった)
この行動がなんだったのか本当のところは私にはよくわかりません。ウニを餌としてもらえると勘違いしただけなのか、卵の天敵ウニを駆除した私を敵ではないらしいと興味をもったのか。

 

なんにしても、この何気ない行為で劇的に私たちの関係が変わったことが面白くて、内心「よっしゃぁぁぁ!ひゃぁっはー!近すぎてストロボ当たらないー!」と興奮していました。

こうやって交流できる魚って面白いですよね〜。

ホッケ

さて、ホッケも同じアイナメ科として負けてはいません(?)。

ホッケの多くは水深の深い場所に生息しているそうです。もちろん例外もあるでしょうが、100メートル前後に生息していて回遊するんだとか(意外にも深海生活のお魚)。大きさはアイナメよりも小さく、せいぜい30cmほどです。40cmもあれば大きい方です。

ダイビングで見られる水深(10〜30メートル)に現れるのは10月〜翌1月頃の繁殖期に限定されるのがアイナメとは大きく違うところです。

婚姻色はめちゃくちゃ地味です。顔と尾が黒くなるだけなのです。
全身真っ黄色になるアイナメと比べると、すごーく地味ですが、ホッケもオスが卵を守る習性があります。複数のメスの卵を1箇所に集めるのではなく、半径1メートル以内に点在するように配置します。

卵の色は緑、全個体共通で1色です。時間が経つと黄色っぽくなることもあります。アイナメと違って、岩の窪みにすっぽり押し込んでしまうので、正直めちゃくちゃ写真に撮りにくいです。

なんとかアップで撮影した1枚

全体的に派手さにも欠けるし撮りにくいなんて…フォト派ダイバーにとっては面白くないかもしれません。その上ホッケはアイナメよりも警戒心が強いのでダイバーの近くに来る個体は少なく、ますます撮りにくいやつなのです。

 

そんなホッケですが、卵をお世話する時に特徴的な行動をとります。卵に海水を吹き付けるような、甘噛みするような仕草をします。卵が奥まったところにあるので、ホッケは逆立ち状態でこの行動を行います。アイナメでは見られない仕草(姿勢?)なので是非見て欲しいです。

 

私はこの瞬間を撮影するために、何十匹ものホッケがいる積丹の岩礁で近寄れそうな個体を探していました。

すると、やはりどこかに1匹くらいはいるものなんです、比較的ダイバーを恐れずにテンポ良く卵をお世話する個体が。4、5箇所ある卵を巡回パトロールしていたので、かなりのモテホッケだと思います。他のホッケよりも一回り体が大きかったので年の功かもしれませんね。

 

ダイバーを恐れないと言ってもアイナメよりは警戒心が強いですし、近づきすぎてプレッシャーを与えると卵のお世話をする姿を見せてくれないので、時間をかけてにじり寄ることにしました(笑)。

卵をお世話 密着初日
密着3日目

初日は最短1メートルまでが限界でしたが、3日間かけてなんとか機嫌の良い時にのみお近づきになることが許されまして、この時はすごく嬉しかった!

のですが…

実は顔から毛が生えているように見える突起はほとんど全部寄生虫だと気がついて鳥肌立つ事案も発生_:(´ཀ`」 ∠):

まぁ、でも、シルバーの体に金色の瞳はめちゃくちゃカッコいいので…寄生虫なぞ硬派なイケメン補正をかけて見なかったことにしましょう。

ちなみにホッケにも性格が色々ありまして…ダイバーを嫌がってどこかへ行ってしまう個体が半数くらいですが、敵と認知してダイバーの頭をド突いてくる子、あんまり気にしない子などなど違いを見るのも面白いです。

かっこいいホッケ

アイナメ科 観察のオススメスポット

アイナメ科の魚は北海道の至る所で見られるのかもしれませんが、各ショップさんの事情や地形、地域による季節的なズレなどがあるものです。

 

アイナメは積丹の美国町で11月頃に観察しやすくなります。
また函館の臼尻では北海道大学の水産実験所があり、研究のためアイナメが保護対象になっており観察しやすいはずです。(アイナメの時期に行ったことがないので正確なことはわかりませんが)

 

ホッケは積丹の幌武向(ホロムイ)で12〜1月にたくさん見られます。一つの岩礁に何十匹と抱卵するので好みの個体を見つけるにはもってこいですね。

利用したショップ

ホッケもアイナメも札幌にあるショップScuba Diving Shop CROSSWAYさんを利用して積丹で観察しました。

高速道路を使って1時間半ほどの道のりを送迎してくれるので雪道の運転に不慣れな方には便利な選択肢です。

 

積丹町自体に宿泊施設は少ない上に高価なので、レンタカーを借りて小樽泊で積丹に集合するか、札幌に滞在して送迎してもらうのがいいですね。利便性を考えると後者がオススメですが、小樽グルメや温泉も楽しみたい方には前者をお勧めします。

まとめ

さて、アイナメ科の魚はいかがでしたでしょうか。
彼らの卵はハッチアウトが始まると隣接する卵も触発されて一気にポポポポポと生まれるのも見逃せませんよ!

 

アイナメ:オスは真っ黄色の婚姻色が美しい、メスの生む卵は色とりどりでカラフル、警戒心は少なめなので観察しやすい

ホッケ:婚姻色は地味だが硬派なシルバーの体に金色の目が格好いい、卵のお世話するときは独特の逆立ちポーズをする、警戒心が強いので時間をかけて接触したい

 

次回はワイドで撮影できる北海道の海をご紹介予定です。更新が亀の歩みではありますが、お楽しみに〜!

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