フォトコンテスト入賞への道のり ~水中写真上達への道のり vol. 6
目次
こんにちは。さやかです。
先日、大変ありがたいことにOceanArt 2020という水中専門フォトコンテストとしては副賞の規模が世界最大クラスのコンテストでマクロ部門2nd place (2位) をいただきました。
撮影時の裏話と受賞直前のゴタゴタを備忘録的に書いてますので、どうぞお気軽に読んでみてください。
Ocean Artとは
Ocean Art は Underwater photography guide という海外の水中撮影チュートリアルのサイトで行われているコンテストです。
海外のダイビングリゾートや旅行会社、水中撮影機材の販売会社がスポンサーになっていて、水中専門の国際的なフォトコンテストとしては規模が大きく、毎年10以上にカテゴリーを募集します。
2020年はコロナ禍にも関わらず副賞の総額500万円ほど、世界80カ国から参加者が集まり、おそらく世界最大クラスの水中フォトコンテストになったのではないでしょうか。
ちなみにOcean Artの面白いところは最初の審査では、撮影エピソードもタイトルも審査対象にならないところです。純粋に視覚芸術を追求しているようです。写真の真骨頂ですね。
(他のNature系フォトコンではエピソードも審査対象だったりします)
ファイナリストとして最終審査(写真のRAWデータ審査)にたどり着いて初めてエピソードを求められます。
その方針のせいか、毎年超ハイレベルな写真が入賞しており、「どうしたらこんなん撮れんの?」「魔法?」「化け物?」と思うほどです。
是非、他受賞作品もリンクから見てみてください。
実は昨年2019年も写真を提出していたのですが、まぁ、当然箸にも棒にもかからず、笑
どうせ今年 (2020年)もカスリもしないだろうけど、出さなければ、選ばれることは絶対ないし…(宝くじ買う人の心理と同じです、笑、買わないと当たらない)
くらいの感覚で出してみたら、なんとまぁ!
キアンコウの赤ちゃんとの初めての出会い
こちらが受賞した作品です。
キアンコウのハッチアウト(孵化)直前の赤ちゃんたちです。
大きさは2mmほど。とっても小さいのです。
水中で初めてみたのは2019年です。成魚とは似ても似つかない可愛らしい顔と不思議な体の形、しっかりと口があって幼魚特有の腹びれも見えたときは感激しました。
当時まさに彼らの可愛い正面顔を撮りたいとは思ったのですが、技術も経験も足りなく全く撮れる気がしませんでした。
一方で、なんとしてでも撮りたいと初めて思った被写体で、撮影に熱中しすぎて自分が海の中にいること、呼吸することも全て忘れて没頭しました。(危険ですのでやめましょう)
海と一体になったような感覚もとても感動的で気持ちよかったのは今でも覚えてます。
2019年、これがキアンコウの卵帯との鮮烈な出会いでした。
これから1年間、その熱は冷めず再挑戦の2020年夏を迎えることになります。
積丹のダイビングについてはこちらの記事もどうぞ!
2020年、キアンコウベビーといきなり再会
1年間の修行?を経て、2020年の夏がやってきました。
絶対撮りたい!撮る!と意気込んでいましたが、ダイビング当日の朝の段階でキアンコウ卵帯が全く見つからないと宣告されました。
不安な気持ちになりながらも積丹ダイビング1本目。
エントリー直後から2ミリほどの稚魚がたくさんいて、あまりに多いので「すごく近くに卵があるのでは?」と思った1分後、巨大な卵帯が岩に覆いかぶさっているのを発見しました。
2メートル四方の卵帯にハッチアウト直前の卵が無数にあり、見ているそばからハッチアウトしていく個体もいて、怖いくらいにベストタイミングの発見でした。
これは運命だ!と、80分/diveを3dive、つまりおよそ4時間、ひたすら撮り続けました。
撮影するのに良い条件の場所を探したり、カメラの設定、ライティングの強さ角度を調整しながら、絶好のタイミングが来るまでピントを合わせ続ける集中力(息ごらえ力?)を保つのは至難の技です。
苦しくて焦ったくて、何度心が折れて天を仰いだことか…何度諦めかけたことか…
でも、今撮らないと、次撮れるのは1年後、
今踏ん張らなかったら、この後1年間、後悔し続けるかもしれない。
いや、一生後悔するかもしれない。
その一心でした。
キアンコウベビー撮影時のこだわり
この作品を撮るにあたり絶対的な理想のイメージがありました。
写真真ん中・右の個体のように「体をクルンと丸めつつ顔がこちらを向いている」です。
(もちろん他にも色々な構図を試しましたが。)
撮りながら、理想の作品に必要な条件を絞り込んでいきました。
- 卵帯が比較的固定されている
- でも、びっちり固定されすぎて、テンションのかかっている卵はダメ
- 卵帯には触れない
- ゼリー状の卵帯が綺麗に保存されている(ボロボロに朽ちていない)
- 砂がついていない。
- 私自身の体が固定しやすく長時間の撮影に耐えられる場所
結構注文が多いんですよ
というのも、ヒラヒラと揺れるゼリーのような卵帯はテンションがかかると薄くなります。卵内の奥行きが短くなると、中の赤ちゃんたちは写真のようにクルッと体を丸められなくなるんです。
固定するために手で触れると破れてしまったり、ライティングの影になってしまいました。
朽ちていたり、砂がつくと美しくなかったですね。
卵帯はやや粘着性があるので一度ついた砂は取り除けないのです。取り除こうと仰いだりすると破れたり、赤ちゃんを強制孵化させてしてしまうこともあります。
2メートル四方もある卵帯でもこの条件を探すと、撮影範囲は僅か手のひら程の範囲まで絞り込まれました。
キアンコウベビーの撮影機材と設定
<<カメラ本体>> Canon 7D Mark II
<<レンズ>> Canon 100mm EF F2.8L Macro
<<ハウジング>> Zillion Housing
<<クローズアップレンズ>> Nauticam SMC-1
<<ライティング>> SEA and SEA YS-D2 2灯
<<カメラの設定>> ss 1/125, F/25, ISO1600
結構攻めた設定ですが、個人的にはF値はもっと絞ったほうがよかったと思っています。ISOを上げたのはストロボ光だけに頼ると、白飛びする部分が出てしまうからです。この設定でも若干目が白く飛んでますね。
現像
ゼリー状の膜のせいで白っぽくなっていたので、ホワイトを慎重に下げながらも、キアンコウベビーの半透明の体の輪郭や1つ1つに区切られた部屋の境界線も残す。
初めて現像した時点でそこそこ良かったのですが、なんとなく垢抜けない印象で、「これだ」って感じではありませんでした。
Ocean Artの提出直前まで、悩んで、片っ端から調整しては戻してを繰り返しながら辿り着いた答えは、「青を引く」ことでした。ホワイトバランスの青ではなく、カラー(彩度)としての青を引いたところ、全体の青かぶりが取れて、キアンコウベビー達の白く半透明の姿が際立つ仕上がりになりました。
その日は突然くる、逃さないための準備は入念に
OceanArt提出後しばらくなんの音沙汰もなく、勝手に落ちたと思い込んで出したことすら忘れていた2021年の始めのことです。北海道で遠征ダイビングしていた時、深夜にメールが来ました。差出人はOceanArt様でした。
てっきり、受賞者発表のプレスリリース(メルマガ)だと思ったのですが、RAWファイル審査に進んだ作品があるからRAWを提出してくれ、という内容でした。
ぶったまげましたよ。
ただ、RAW審査に進めるとは全く思っていなくて、RAWデータを持ち歩く習慣もなくて…慌てました。
「提出はできるだけ早く」とだけあり、具体的な期限は記載されてませんでしたが、3日間自宅に戻るまで待ってほしいと連絡したメールに先方からの返信はなく…
このままでは受賞機会を逃すかもしれないと思い、必死で記憶媒体を漁りまくりました。
奇跡的にデータを見つけだすことができ提出できました。
これは本当の本当に偶然で、強運に感謝したものです。
最後に
初めてRAW審査のあるフォトコンテストで入賞させていただくことができ、本当に嬉しく思いました。
英語でキャプションを書いたり、コンテストの規定を確認するのはとても大変ですが、それだけ上達したということがこういう形で実感できるのはコンテストのいいところですね。
今回、写真撮影で学んだ大事なことは2つ
- 自分の理想とする写真を貪欲に粘り強く撮ること
- 提出した作品のRAWも持ち歩くこと
受賞したことは嬉しいですが、実は、個人的にはベストではないと思っています。
さらなる作品を目指して、精進いたします。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
撮影に対するマインドのようなものですが、少しでも水中写真上達の一助になればと思い書きました。
それでは、また!
PADI Divemaster #832577 ダイビング✖️写真✖️旅 = 世界の海・自然と人と人と社会を繋ぐ 言語・距離・文化の壁、全部越えて、 もっと自由に、もっと楽しく、 興奮と感動と癒しの海への扉となることを目指します。